起き抜けの身体に、特に指先から二の腕にかけて「6時半」の感覚があったので、
起き抜けの身体に、特に指先から二の腕にかけて「6時半」の感覚があったので、もう少し寝ようかしらとスマホを点けるとしっかり8時だった。在宅勤務なので大慌てする起床時間ではないが、ではこの「6時半」の感覚はどのように処理しようかしらと困り、数度腕を叩いた。8時の感覚になった。
朝は買っておいたチルドの肉まんを2つ食べる。マグカップにお湯を入れて、肉まんをその上に起き、レンジで温めるとふわふわになるらしいと聞き及んでそのようにする。レンジの中で回るマグカップの上に置かれた肉まんを眺めながら、なんだか儀式めいているなと思いながら朝の情報収集。Googleがコアアップデートを行うことにしたらしく、各所で悲鳴と喝采が入り混じっていた。
たいしてふわふわにもなっていない肉まんをかじりながら仕事に取り掛かる。本当にたいしてふわふわにもなっておらず、少しだけがっかりする。儀式の手順を誤って肉まんの神様の不興を買ったのかもしれない。そういえば、ファミリーマートかセブンイレブンで肉まん100円セールをやっていた。肉まんは今コンビニのホットスナック売り場で手一杯に違いない。
仕事は恙無く終わり(本当は恙無くない。アップデートもあったし自分の無知ゆえにミスもしたし目標の数字がかなりしんどい)、坂本慎太郎の新譜についてのインタビューなどを読み漁る。(※以下太字は自分が装飾したもの)
―ありきたりな「かっこよさ」との線引きみたいなものも感じますが。
坂本:自分のなかではかっこいい感じになってるんですけどね。なんていうんですか、「簡潔で全部がピシッと決まってて、それ以外ない」みたいな状態になってる感じ。しかもそれが、あんまりそうとは思わせない、みたいな。その状態になるのはすごく難しくて、滅多にならないんですよ。絶妙なバランスで成り立ってるんだけど、それがひとつでも違うとダメで、いろんな磁場のどこにも振れないまま真空状態にとどまってるみたいなイメージですね。だから、歌詞も意味がどうこうじゃなくて、音とか曲とか全部があって成立している。ワンフレーズ違うだけでわかりやすい歌になっちゃったりするし、音色がちょっと変わるだけ違う感じに聴こえたりするものなんですけど、その寸前で踏みとどまってる。すごくマヌケな状態でピシッと無重力状態にあるのが、僕の思うかっこよさなんです。
――では、「ツバメの季節に/歴史をいじらないで」の2曲についてはいかがですか? とりわけ「歴史をいじらないで」は公文書改ざんやフェイクニュースといった社会問題をかなり直接的に批判している楽曲だと感じたのですが。
坂本:そうですね。というか、やっちゃいけないことじゃないですか、それは。記録やデータが積み重なって今があるわけだし、自分達は先人の失敗から学んで進歩してきたわけなんだから、それを変えちゃったらすべての拠り所がなくなりますよね。これは政治の話だけでもなくて、例えば大した事なかったはずの人が今は大物みたいになっていたり、その逆に昔かっこよかった人が表に出ないまま消えちゃったり、そういうのも記録があった上で再評価されているのであればわかるんですけど、そこで元の記録をいじっちゃったら、もうめちゃくちゃになってしまいますよね。それをやってもいいと言う人は、誰もいないと思うんです。
わたしは現実を認識する指標として、〈坂本慎太郎がいま現実に対して何かを言っているなら、それはかなりヤバいかもしれない〉という軸を設けて判断しているところがある。
「ツバメの季節に」を最初に聴いた時、 「あ、原発の曲だ」と思った。
何年経って元に戻るの?
それとももっと腐って更地になるの?
それとももっと光って真っ白になるの?
ツバメの季節にまた会えるかな?
チェルノブイリ原発事故でツバメの身体の一部分が白化したというのを何かで読んだことがあったので、瞬間的にそう感じたのかも。一応、このウイルス禍の中で発表された曲ということもあるので「何年経って元に戻るの?」という問いを「(このウイルス禍、とそれを巡る対応などは)いつになったら終わるの?」的に捉える向きの方が多いかもしれない。
でも、それ以上に原発の事故が起きた時のあの状況と、現在、各所で喧々諤々やっているこの状況が似通っているのかもしれない。 つまり「おぼろげナイトクラブ」で言う、以下のような状況。
変な預言者と陰謀論者となんとか神社の信者と神父が喧嘩してる(喧嘩してる)
ぐじゃぐじゃだな(ぐじゃぐじゃだね)
「歴史をいじらないで」については、インタビューの中で起こった諸問題に対して「やっちゃいけないこと」と断じた上で、坂本慎太郎の言う「かっこよさ」……「すごくマヌケな状態でピシッと無重力状態にある」状態が保たれている。今日はこの2曲しか聴いていない。
晩ご飯には砂肝をレモンと胡椒でなんとかしてもやしと炒めたものを食べる。胡椒が強すぎる。もやしが多すぎる。