cqhack_blog

Twitter :@cqhack

目的のないポイントカード、上の何もしない連中と唐揚げ棒

(22:58)当たり前みたいな顔で渡されたので、受け取った。名刺大の薄花色の画用紙に、格子状の黒線が刷られている。そのグリッドのうちのひとつにカタカナの店名ふたもじが彫られた判子がばんっ、と押されただけの、簡素なポイントカードであった。

リモートワークが推奨されてから早1年経つが、勤めている部署は「週1で出社しましょう」との方針を示している。「顔の見えるコミュニケーション」みたいなものが大事ということであろう。自分がメンバーを管理する立場だったら確かに大変だしな、と思いながら出社している。

出社した日はいつも同じタイレストランで昼食を買う。その日の気分に応じてメニューは変えるが、グリーンカレーを頼むことが多い。時折店員さんの押しに負けて「その日のおすすめ」を買うこともある。

かれこれ4、5ヶ月は毎週この店のランチを食べているが、昨日、急にポイントカードを渡されたのであった。店名のハンコと格子状の黒線以外は何も書かれていない。いったいこのポイントカードを貯めればどうなるのかも全く分からない。

店員さんがかなり自由なお店なので、スタンプが貯まっても「すごい! いつもありがとうございます! コップンカー!」で終わるパターンもあり得る。逆に、「すごい! ありがとうございます! 8年間グリーンカレー無料です! コップンカー!」と言われてもおかしくないなと思っているので、今回は後者の可能性に賭けてみる。そもそも何を食べても美味しい店なので、賭けに負けたとしても悔いは残らない。

今日は自宅勤務だったので、家の近くのコンビニで昼食を済ます。ひどく風が強かった。セブンイレブンの前に、会社のロゴが入った自転車を止めて喋っている男性がふたり居た。雨は降っていなかったが、どちらも合羽を被っていた。傘置き場に傘をねじ込まんとしている間、会話を盗み聞きしてしまう。どうやら先輩と後輩らしかった。

「上の何もしない連中はさ、どんどん給料を減らされていくわけ」

「なるほど」

「だって稼いでるの俺たちじゃん? 会社がきつくなった時に、金を稼がない上の連中と俺ら、どっち切るのか、分かるでしょ?」

「分かります」

こんなに風の強い日にずいぶんシビアな話を……と感心しながら店に入る。ホットスナックが割引になっていたので、心ともなく唐揚げ棒を買ってしまう。この人生で、食べなくてもいい唐揚げ棒をあと何本食べてしまうのだろうと少し後悔する。

店を出たら、先輩の方がシビアな話をしながら唐揚げ棒を食べていた。きっと自分と同様、割引に釣られたに違いない。先輩が言う「上の連中」も、我々と同じように20円程度しか安くなっていない唐揚げ棒を頬張っていたら面白いな、とにやにやしながら家に帰った。仕事をする。(23:18)