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一秒一秒おじさんになっていく

(22:35)

誤ってiPhoneのカメラをインカメラに切り換えてしまい、驚く。6.1インチのディスプレイに、でかでかとおじさんが写っている。自分の顔である。顔を左右に振ってみても、おじさんでなくなる瞬間がない。360度、つむじから顎の先まで余すことなくおじさんだった。

これには本当に驚いた。本当に、おじさんだった。ハリもコシもない髪、口周りのきったない毛、砂漠のような肌。「おじさんじゃん」と思わず言ってしまってから、考えていることをすぐ口に出すところもおじさんだなと思って落ち込む。

もともと老け顔な上に装いにも疎いので、「落ち着いて見える」といった気遣いや「若く見えない」「老けてる」といったダイレクトアタックにも慣れっこである。が、自分のことを「おじさんじゃん」とここまで強く思ったことは、正直、今までになかった。でも、思い返せばずっとおじさんだったような気がする。いつからおじさんになったんだろう。

 

枕元の抜け毛が増えていたり

お気に入りの惣菜パンがコンビニから姿を消したり

そういう小さな絶望の積み重ねが人を大人にするのです

(呪術廻戦 七海建人)

ナナミンはこんなふうに言っている。セブンイレブンの完熟トマトサンラータンが消えて落ち込んだのは一昨年だった。

そういえば、打ち合わせ中に「こういうのがあるってみんな知ってるかな」と思うことも多くなってきた。話がうまく流れるようなら口をつぐむことが多いのだが、時折「こういうやり方とかあってえ〜……あとこういうのも簡単なんでえ〜……」と見切り発車で話しだしてしまうことがある。めちゃめちゃおじさんのムーブだ。何かに長く接することで知識が増えるも、それを誰かに敷衍しようとして空回りし、結果「話の長いおじさん」になっている。最悪。

いろんなものに長じれば長じるほど、いろんなものを無くせば無くすほど、おじさんになっていく。コンマ何秒かごとに細胞が死に、そしてちょっとだけおじさんになった細胞に入れ替わる。これから先の人生のことを考えると、いまこの瞬間が最もおじさんではなく、これまでの人生を振り返ると、いまこの瞬間が最もおじさんだ。毎秒毎秒おじさんとしての最高記録を更新し続けている。自分は、これから、一秒一秒、おじさんになっていく。その事実に自覚的でありたい。(22:56)